Business Trend

2010/3/16

MONITORING ― 本当に価値のあるモニタリングとは ―

第1回 モニタリング業務の問題と効果に関する考察

やらなければならないモニタリング

コンタクトセンターの管理者にとって、モニタリングは常に悩みの種ではないでしょうか。
モニタリングには、お客様応対の品質のほか、CSR[※1]のスキル、さらには業務プロセスの問題点を見つけるなど、さまざまな意図が込められますが、それ自体の有効性は確かです。
コールセンターの現場で、そしてお客様との間で何が起きているのかを直接把握することの大切さには、異論はないことでしょう。

しかし現実には、忙しいと行われなくなる、顧客クレームを受けて慌てて始める、新人教育と新製品・新サービス導入時以外にはやらない、などの例をよく耳にします。
その理由は実は単純であり、つまり、投入する工数に対して得られる効果がわからないか、低いと判断されているからでしょう。
(もしもモニタリングがコンプライアンスのルールや、あるいは顧客との取り決めで定義されているとしたら、滅多なことでは中止されることはないと思います)

結果、モニタリングをやってもCS(顧客満足度)調査の数値が上がらなかった、やめても下がらなかった、あるいは数値が下がりだすまではやらないか、数ヶ月に一回程度でよい、という経験や判断をされた方が、実は多いのではないかと思います。
(誤解のないように申し上げておきますが、CS向上のための施策には力を入れている企業でお聞きした内容です)

さて、COPC-2000®もそろそろ15年を迎えようとしていますが、その中で質量ともに最もダイナミックな変化を遂げた部分の一つがモニタリングです。
つまり、よりよいモニタリングを行う試みが世界各地のコールセンターで行われていて、業務パフォーマンスやCSの向上に効果の上がるモニタリングを行うための条件が、ほとんどは経験則ではありますが、次々と明らかになってきたのです。
コールセンター向けの電話インフラの環境であれば、モニタリングはヘッドセット一つで「いつでも」「気軽に」行うことができますが、成功させるにはさまざまな条件があるのです。

モニタリングは月一回一本ずつでいいのか?

コールモニタリングの最大の特徴であり問題点は、定期的・継続的に管理者の時間を拘束するということです。
もちろん、音声の感情分析とテキスト認識エンジンが、リアルタイムでアラートを上げてくれる日も遠くはないでしょうが、それはあくまで補助的な手段であり、コールセンターの管理タスクの中でモニタリングがもっとも工数がかかること自体は、当分の間変わらないものと思われます。
ゆえに、コールモニタリングには「どれだけやったらいいか?」という問題が常について回ります。

COPC-2000®では、CSR一人当たり月一回以上という基準がありますが、統計的に信頼性のある値を算出[※2]すると多くの場合、現実的には困難な数値が出てしまうようです。
確かに、モニタリングの数が少ないからといって、常に業務に大きなダメージがある訳ではありません。
そこには、問題がクレームや返品などで顕在化することなく、お客様の気持ちの中に留まってしまえば、とりあえずは発覚しないという事情もあります。
(もちろん、別なシーンでそのお客様がネガティブコメントを発し続けるリスクは別です)

またCS調査やVOC[※3]集計などにより、別な形でお客様の声を収集できているコールセンターであれば、結果として問題を見落とすリスクが軽減されていることもあるでしょう。
このような状況を踏まえると、COPC-2000®でも規格として打ち出すのは「最低、全員に月1回ずつ」であり、そこにさまざまな条件として「サンプリングの方法を体系的に決める」「サンプリングにバラつきがない状態にする」などを付けるのに留まっていると推測できるでしょう。

逆に、さまざまな条件がついていることからみても、モニタリングは月一回全員に行うだけでよい、と機械的に決めてしまってはパフォーマンスを維持するのは困難かもしれません。
特に「新人や前回ミスをした人など、問題を起こす可能性が高い人には頻度を増やす」という条件は肝要です。

多くのコールセンターでは、モニタリングのスコアはCSRのスキルや品質の評価項目の一部であり、時給にも影響する仕組みになっていることでしょうから、モニタリング数が少ないと「たまたまモニタリングされた時はミスをしただけなのに、私はそれで評価されるのですか?」とCSRから逆に問われるような事態もあり得るでしょう。

今回は、モニタリング業務を取り巻く課題や疑問についての考察を中心にご紹介しました。
次回は具体的なモニタリングの手法についてご紹介致します。

※1 Customer Service Representatives=お客様サービスの担当者。日本ではオペレーターという呼称が多く使われますが、COPC等では、より正確に業務内容を表現するため、CSRという呼び方をします。

※2 COPCでも“Sample Size Calculator”というツールが配布されています。母集団(例:月間の呼量)、過去の欠陥品率(致命的ミスの発生率)、許容する誤差率と信頼度を使って機械的に、適正とされるモニタリングの実施呼量(サンプルサイズ)を算出できます。

※3 Voice of the Customer=企業に寄せられるご意見・ご要望・苦情等を「お客様の声」として捉え、活用していく考え方。

平井 健一郎 SCSKサービスウェア株式会社 事業管理部

平井 健一郎

SCSKサービスウェア株式会社
事業管理部

1989年株式会社CSK(現SCSK株式会社)入社、システムエンジニアとしてメインフレームとWindows上での開発に従事。
1995年当社へ転籍、テクニカルサポートサービスの立ち上げに参画。
1999〜2010年コンタクトセンター品質管理部門の責任者として、品質向上とオペレーション標準化に取り組む。
2002〜2006年COPC-2000®登録コーディネータとして、認証取得と維持に携わる。
2011年コン検理事企業の一員として運営に携わる。

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