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営業バックオフィス改革の第一歩 ~「属人化」から脱却するための業務標準化とは~

アセスメント / コンサルティング

公開日アイコン公開日:2026年09月03日
/ 更新日アイコン更新日: 2026年08月31日

全国に複数の営業拠点を持つBtoB企業において、長年手つかずになりがちな領域があります。それが営業バックオフィスの属人化です。

「あの人しか、この顧客の受発注処理ができない」「拠点ごとにシステムの使い方が異なる」。こうした「個人商店化」とも呼べるブラックボックス状態は、業務効率の低下を引き起こすだけでなく、担当者の退職や欠勤がビジネス停止のリスクへとつながりかねません。
従業員の高齢化が進み、属人的ノウハウを持つベテランの定年退職が始まっています。これは、事業の持続性と営業生産性の両面で、大きな経営リスクといえます。
この課題を放置することにより、営業は本来注力すべき顧客対応や提案活動ではなく、社内調整や事務処理に時間を費やすことになります。その結果、営業組織としての提案力や案件創出力が徐々に失われ、企業の成長を支える営業力そのものの低下を招く恐れがあります。

本コラムでは、こうした営業バックオフィスの属人化を解消し、全国規模での業務標準化とオペレーションセンターの集約を通じて、継続的に業務品質と生産性を高める「オペレーショナルエクセレンス」を実現するための具体的なアプローチをご紹介します。

1. なぜ営業バックオフィスは「ブラックボックス化」するのか?

BtoBの営業バックオフィスは、業界や取引先によって多岐にわたる業務フローが存在することも珍しくありません。

長年にわたる特定顧客の要望への個別対応や、過去から続く複雑な業務プロセスの継承により、いつしかマニュアルは形骸化し、担当者の記憶と経験に依存した運用が定着してしまいます。結果として、管理者の目が業務の細部まで行き届かず、担当者以外は誰も詳細な手順を知らないという属人化が生み出されるのです。

この状態を脱却するには、精神論ではなく、論理的かつ定量的なアプローチで業務を解きほぐす必要があります。

2. 成功の鍵は「標準業務」の再定義にある

属人化を解消するための第一歩は業務の標準化ですが、ここで多くの企業がつまずきます。従来、業務の標準化といえば「簡単なマニュアルを読めば誰でもできる業務」と定義されがちでした。しかし、これでは抜本的な改革は進みません。

業務改革(BPR)を成功させるためには、この定義をアップデートする必要があります。新しい標準化の定義は、実施する場所と人に縛られない業務であることです。

<標準業務の再定義>

  • 標準業務:業務が適切に整備・言語化されており、場所や担当者のスキルに依存せず、誰もが同じ手順・品質で遂行できる状態。
  • 非標準業務:業務が未整備で、実施する場所や人が限定されている業務。

(対象プロジェクトの例)

業務 従来の定義 新しい定義
標準

基幹システム(発注依頼/仕入/売上/請求)業務と付帯業務

業務が整備されており※1、場所を問わず、誰でも同じ手順・品質で進められる業務

システムの操作、一定間隔で同じ手順を繰り返す業務※2 等

非標準

イレギュラー/特定顧客に対するイレギュラー判断と社内調整

イレギュラーにまつわる基幹システム(発注依頼/仕入/売上/請求)業務

以下いずれかに該当
業務が未整/実施場所が限られている/できる人が限られている
例:定型化が難しい業務(反復性がない、専門知識を要する等)
  • ※1 業務が整備されている:当該業務を遂行するために必要なマニュアル・ルールが整備されている
  • ※2 一定間隔で同じ手順を繰り返す業務:一定間隔(日・月・年)で発生するなど、実施するタイミングや内容が事前に予測でき、反復性のある業務

一般的には、難易度によって仕分けます。しかし、本質的に重要なのは、難易度ではなく「物理的・属人的な制約があるか否か」で仕分けることです。こうした発想の転換が、業務のロケーションの集約化を推進する重要な要素となります。

3. 「BPRスコアリング」で集約の可否を定量化する

業務を仕分ける際、現場の「これは特殊な業務だから集約できない」という感覚的な判断をするべきではありません。当社では、客観的な評価軸を用いて集約の可否を判定する手法を「BPRスコアリング」と呼んでいます。

具体的には、通年のトランザクションデータを基に、以下のような「減点ロジック(制約条件)」を用いて評価します。

  • 物理的・システム的制約:紙帳票の有無、特定拠点の特殊端末やネットワークの要否
  • 業務整備の状況:イレギュラー対応時の判断基準マトリクスやエスカレーション先、対応手順の整備状況
  • 作業の性質:営業からのバイネーム(名指し)での依頼の有無、個人間でのやり取りの発生

これらの軸で評価することで、全社の業務を「◯(問題なく集約可能)」「△(条件付きで集約可能)」「×(集約不可・拠点残留)」で判定し、定量的に可視化することができます。

4. 「△(条件付きで集約可能)」を解消する2つのアプローチ

スコアリングを行うと、多くの業務が「△(条件付きで集約可能)」に分類されます。実は、この「△」をいかにして「◯」に移行させるかが、BPRの成否を左右する重要なポイントです。

阻害要因となる制約条件を取り払うには、大きく2つの対処方針があります。

1. 一括調整(ルールの根本的変更)

押印やFAX対応、電子入札端末の利用といった物理的な制約は、他部門(法務・経理など)と調整し、業務フロー全体を根本から変更する「一括調整」を図ります。例えば、拠点への押印依頼フローを見直すことや電子FAXを導入することで、一気にロケーションフリー化が進みます。

2. 個別調整(対峙部門との責任分界点の見直し)

書面の手渡しの文化や特定の担当者しか知らない個別システムの操作などは、関係する営業部門や顧客との間で個別に調整を行い、責任分界点を明確に定義し直すことで制約を解除します。

5. まとめ:データドリブン経営を支える仕組みへ

属人化を解消するためのステップは、現場インタビューによる徹底的な「業務フローの可視化」から始まります。洗い出したアクティビティを階層化して比較・分析(プロセス統合)し、差分をなくしていく地道な作業が、持続的な競争力を支えるバックオフィスの構築につながります。

「集約×IT×BPRメソッド」を掛け合わせることで、事務作業は標準化され、蓄積された業務データをAIや分析に活用できる基盤へと発展します。それが、データドリブン経営を支える仕組みへつながります。

貴社の営業バックオフィスは、今も「個人商店」のままになっていないでしょうか。属人化の解消は、未来の持続的成長に向けた不可欠な投資です。

【筆者紹介】

鈴木 晃博氏

鈴木 晃博

SCSKサービスウェア株式会社
次世代業務基盤づくり本部 プロセスコンサルティング部
プロセスコンサルティング第一課

製造業・サービス業を中心に、戦略立案から業務設計・実行支援まで一気通貫で支援してきたプロセスコンサルタント。大手IT企業でのSCM・ERP導入支援を皮切りに、経営コンサルファーム、ITベンチャー、BPO事業会社などを経験し、豊富な実績を有する。BPO戦略策定、業務可視化・標準化、業務改革×IT活用に強みを持ち、現場に根差した実行力ある改革を得意とする。

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