公開日:2024年09月10日
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更新日:2024年09月07日
ECサイトのカスタマーサポートは、顧客との大切なコミュニケーションの場。
対面で直接相談にのることができないからこそ、顧客の困りごとをいかにスムーズに解決できるかが重要といえます。オンラインショッピングの利用が拡大している今、カスタマーサポートの効率化が求められています。
コンタクトセンターを全国に展開する当社では、この課題への取り組みとして生成AIに着目。生成AIを活用し、アパレルECサイトのカスタマーサポートの効率化を試みました。
今回はその具体例として、②返信メール文の作成を生成AIで自動化する取り組みについてご紹介します。
前回記事「①メール応対の担当割りを生成AIで自動化する取り組み」はこちら。
検証②生成AIで返信メール文の作成を自動化できないか?
アパレルECのカスタマーサポートに寄せられる返品や購入のキャンセルなどの問い合わせ。至急のケースも多いため、いかにお客様にストレスを与えることなく、スピーディーに返信できるかが重要です。
一般的に、多くのカスタマーサポートでは、問い合わせの種別ごとに返信文をテンプレート化することで効率化を図っています。しかし、いくらテンプレートがあるとはいえ、メールの意図や背景を適切に理解し、正しい日本語で文章を書くのはスキルを要します。
そこで、当社は生成AIが持つ文章の理解力と、滑らかな文章の生成力に着目し、既存のテンプレートをもとに生成AIが返信メールを作成できるか試みました。
検証方法と評価のポイント
検証方法
顧客から届いた約100通のメールについて、テンプレートを生成AIに提示し、返信メール文を書いてもらいました。なお、メールは個人情報が分からないよう、マスキングをしています。
評価のポイント
- メール文がテンプレートどおりに作られており、その内容が正しいか。
検証環境
SCSK Generative AI(SCSK-GAI)※1
※1 出典:SCSK-GAIは、SCSKグループ役職員の業務効率化・生産性向上を促進するために提供されている生成AIサービスです。外部(クラウドサービスや生成AIサービスを提供する事業者)への入出力データの漏洩防止、多要素認証による認証強化、利用に際しての注意事項のガイドライン化などの対策を講じることでセキュリティを担保しています。
検証結果
生成AIが作成したメールは合格点に届かず。その理由は?
検証の結果、生成AIが作成した文章は、人が書いたものと見分けがつかないほど、滑らかで自然でした。特に評価すべき点は、箇条書きや改行を入れる、一文を短くするなど、読み手に配慮した読みやすい文章となっていたことです。
一方、生成AIが作成したメールのほぼすべてにおいて2つの問題が起きていました。
一つ目は、生成AIがテンプレートを改変してしまうことです。例えば、定型文の一部を削除した、あるいは、クレームに対し冒頭で謝罪が述べられていなかったなど。
二つ目は、外部の情報を取り込んで文章を創作してしまうことです。これは、誤った対応につながる恐れがあり、最悪の場合、顧客とのトラブルに発展しかねません。
今回の検証では、残念ながら、合格点には程遠い結果となりました。しかし、これらの事象は、生成AIへの指示の工夫や参照情報の制限などにより改善される場合もあります。実用化のためにはさらなる調整が必要であることが分かりました。
今回の学び
今回の検証では、生成AIを活用したメール文の自動生成における課題が明らかになりました。実用化に向けた道のりは続く一方、生成AIが持つメールの内容を適切に理解する力や、読み手に配慮した読みやすい文章を効率的に作成する力は、他の用途でも活用できる可能性を感じさせてくれました。
例えば、業務全体の自動化が難しくても、メール文例の作成や、返信メールのチェックなど、部分的な適用を試みることで一定の効果が期待できると考えられます。
今回の検証が生成AIの活用をどのように進めるのかお悩みの皆様にとっての学びとなれば幸いです。
前回の記事、「①メール応対の担当割りを生成AIで自動化する取り組み」についてもあわせてご覧ください。
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