
公開日:2024年12月12日
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更新日:2024年12月12日
近年、製造業や小売業を中心に、日本企業が越境ECに参入する動きが見られます。特に進出先の候補として人気なのが、世界のEC市場をリードする中国とアメリカです。この2つの市場の魅力はどこにあるのでしょうか?
この記事では、中国とアメリカで越境ECを展開するメリットや課題について、市場規模やインバウンドとの関係性など、さまざまな視点から比較しました。
\こんな方におすすめ/
- 越境ECの市場規模やトレンドについて知りたい方
- 中国やアメリカで越境ECを始めたい方
INDEX
越境ECとは
越境ECとは、海外の消費者に向けて商品やサービスを売買する電子商取引のことです。自国では手に入らない商品を選ぶ楽しさや、国内より安価に商品を購入できる点が消費者から支持されています。
越境ECが近年拡大している背景には3つの要因が考えられます。
1つ目は、スマートフォンの普及です。24時間365日、隙間時間を利用してインターネットにつながる生活が社会に浸透したことで、スマートフォン経由のECの取引が増加しました。
2つ目は、SNSの利用者数の増加です。これにより、企業は世界中の人々に低コストでプロモーションが可能となりました。
3つ目は、電子決済の普及です。クレジットカードや電子マネーの利用者数の増加は、オンライン上での取引を加速させる要因となっています。
越境ECの形態
越境ECの形態は大きく2つに分けられます。
- 自社サイトを構築する方法
- ECモールに出店する方法
1. 自社サイトを構築する方法
自社のECサイトを多言語化する方法です。SNSや動画などを組み合わせた自由度の高いサイトを構築したい事業者や、運営を自社でコントロールしたい事業者におすすめです。
2. ECモールに出店する方法
国内や相手国のECモールに出店する方法です。独自のプラットフォームを構築せず、手軽に越境ECを始めたい事業者におすすめです。
代表的なECモールとして、国内では「Rakuten」や「ZOZOTOWN」、海外では中国の「天猫(Tmall)」「京東(JD.COM)」、アメリカの「Amazon」などが有名です。
代表的なECモールとして、
国内では、
「Rakuten」
「ZOZOTOWN」
海外では、
「天猫(Tmall)」(中国)
「京東(JD.COM)」(中国)
「Amazon」(アメリカ)
などが有名です。
世界の越境EC市場規模
越境EC市場の成長は著しく、Facts & Factorsによると、世界のBtoC越境市場規模は2021年に約7,850億米ドルと評価され、2030年までに7兆9,380億米ドルに達すると予想されています ※1 。これは年平均26.19 %の非常に高い成長率を示しています ※1 。
市場の急速な拡大は、これから越境ECを始める企業にとって大きな追い風となるでしょう。


- ※1 出典:Facts & Factors| Cross-Border B2C E-Commerce Market Size & Share Analysis Report 2022-2030
世界のEC市場規模におけるシェア
経済産業省の「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、世界のBtoC EC市場規模の約7割を1位の中国と2位のアメリカが占めています。この2か国は、オンラインでの購入経験がある消費者が多く、今後も市場拡大が予測されています。


中国が全世界の51.3 %、続いて米国は19.5 %、英国は3.6 %、日本の3.4 %、韓国の2.1 %と続く。中国の市場規模の大きさが際立っており1 国で市場の50 %以上を占め、米国を加えると上位2か国で世界の70.9 %のシェアとなっている ※2 。
- ※2 出典:経済産業省| 令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書 より引用
EC2大市場、中国とアメリカの比較
ここからは、越境ECをどこで展開するか検討している企業に向けて、世界の2大EC市場である中国とアメリカを4つの観点で比較します。
比較ポイント
- 日本との2国間における越境EC市場規模
- トレンド
- 人口と多言語対応
- インバウンド旅行との関係性
1. 日本との2国間における越境EC市場規模
経済産業省の「令和5年度
電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2023年に中国とアメリカの消費者が日本企業から購入した額をもとに推計した日本との2国間におけるBtoC
越境EC市場規模は、中国が前年より7.7 %増の2兆4,301億円、アメリカが前年より13.3
%増の1兆4,798億円でした。
規模では中国が1兆円近くアメリカを上回りましたが、前年からの伸び率はアメリカの方が高い上昇率をみせています
※3
。
※本調査には、物販の他にも、スマートフォンアプリやクラウドサービスなど、越境を前提としたサービスも対象として含まれます。


- ※3 出典:経済産業省| 令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書
2. トレンド
中国とアメリカのEC市場にまつわるトレンドをご紹介します。
中国
中国向け越境ECで欠かせないのがSNSです。中国の若者はTVなどのマスメディアよりも、WeiboなどのSNSから情報を集める傾向にあるからです。
インフルエンサーがブログやSNS上で商品やサービスをPRする手法や、動画を使ったリアルタイムのライブコマースがマーケティングのトレンドとなっています。
アメリカ
インフレの影響で消費者の間で節約志向が進む中、SHEINやTemuといった低価格を売りにする中国の越境ECがダウングレード消費の受け皿として人気を集めています。これらの企業は、大幅な値引きやインフルエンサーを活用した効果的なPRを通じて急速にシェアを伸ばしています。
3. 人口と多言語対応
マーケットの人口規模と、ECサイトの翻訳や外国語のサポートなどの多言語化の観点で両国を比較しました。


中国
中国の人口は世界で2番目に多い約14億人 ※4 。世界最大規模のマーケットであり、大きなビジネスチャンスを秘めています。
多言語対応で注意すべき点は2つあります。
まず、ECサイトの構築において、中国語には簡体字と繁体字の2種類があるため、販売する地域に応じた翻訳が必要です。
カスタマーサポートにおいては、中国語人材の採用が課題となりますが、日本との時差は1時間しかないため、トラブルや問い合わせの対応において時差による影響を受けにくいのが特徴です。
アメリカ
アメリカの人口は3億3,650万人
※4
で、世界3位を誇ります。さらに、言語人口という観点でみれば、英語は世界で最も話されている言語であり、英語スピーカーは世界に約15億人
※5
存在すると言われています。
英語を母国語とするイギリス、オーストラリア、カナダや、英語を話す人が多いインドやフィリピンにビジネスを拡大できるのがアメリカ向けに越境ECを始めるメリットの1つです。
多言語対応で注意すべき点は時差です。日本との時差が14時間(東部標準時)から17時間(太平洋標準時)ほどあるため、カスタマーサポートでは深夜や早朝の問い合わせに対応する人材確保が課題となります。
- ※4 出典: 外務省HP
- ※5 出典:Eberhard, David M., Gary F. Simons, and Charles D. Fennig (eds.). 2024. Ethnologue: Languages of the World. Twenty-seventh edition. Dallas, Texas: SIL International. Online version
4. インバウンド旅行との関係性
近年、インバウンド旅行者が日本で購入した商品を帰国後も購入する傾向にあり、リピート購入の手段として越境ECを活用する企業が増えています。2023年の観光庁の調査 ※6 をもとに、両国の旅行者の特徴と越境ECへの影響を紹介します。


中国
中国人旅行客といえば、流行語大賞になった「爆買い」が有名です。旅行中に買い物を楽しむ傾向にあるため、インバウンド旅行者を越境ECの顧客に育てる戦略が効果的です。
訪日中国人の一人当たり買い物支出額は1位の約12万2千円で、本調査の対象国のなかで唯一10万円を超えました。また、旅行支出に占める買い物代の割合も38.0 %と他国と比較して高いのが特徴です。
購入されるものとしては、1位 菓子類、2位 化粧品・香水、3位 医薬品が人気となっています。
アメリカ
訪日アメリカ人の一人当たり買い物支出額は約4万6千円、旅行支出に占める買い物代の割合は15.6 %と、中国と比べると低いのが分かります。
アメリカを含む欧米の旅行者は買い物よりも体験価値を重視する傾向にあるため、越境ECに結びつけるためには中国とはまた違ったアプローチが必要と考えられます。
購入されるものとしては、1位 その他食料品・飲料・たばこ、2位 菓子類、3位 衣類が人気となっています。
- ※6 出典:観光庁| 訪日外国人の消費動向 2023年年次報告書
まとめ
いかがでしたか? 中国とアメリカの2大市場は、規模、トレンド、人口、多言語対応、そしてインバウンド旅行者の行動において、それぞれ異なる特徴を持っています。
越境ECを始める際は、これらの特徴を理解し、多角的な観点から販売先を検討するのが大切です。
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