
公開日:2023年12月11日
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更新日:2024年04月18日
デジタル技術の急速な進化を遂げている近年。多くの企業や組織はそれらを活用し、ビジネスモデルや経営戦略、業務プロセス、顧客体験などを変革し、新たな価値を創造する取組み(DX)に力を注いでいます。DXを推進するうえで、製品・サービスのあり方を、ビジネス視点とユーザー視点の両側面で総合的にとらえることが重要です。
このコラムでは、経済産業省と独立情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準」において、「DX推進スキル標準」の人材類型の1つである「デザイナー」について、その役割や必要なスキル、他の人材類型との関わりを解説します。
「デジタルスキル標準」とは
「デジタルスキル標準」の概要
「デジタルスキル標準」は、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定した、DX時代におけるデジタル人材の育成と確保・個人の学習に関する指針です。デジタル化への受容を高め、DXを推進するために必要な人材像や知識・スキル・学習項目が明確化されています。
企業は、「デジタルスキル標準」を参照し、社内研修の設計や採用基準の見直しなど、人材育成・確保の取り組みに活用できます。個人としても、所属する組織の役割や自身のキャリアビジョンを踏まえ、必要な知識・スキルを認識するための指針として活用できます。
「デジタルスキル標準」は、全てのビジネスパーソンを対象とした「DXリテラシー標準」と、DXを推進する中心的な人材を対象とした「DX推進スキル標準」の2種類で構成されています。今回ご紹介する「デザイナー」は、後者に含まれており、DXを推進する中心的な人材類型の1つです。

\「デジタルスキル標準」の詳細は以下をご覧ください/
「DX推進スキル標準」の概要
「DXスキル標準」は、DXを推進する中心的な人材を5つの類型(ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ)に分けています。それぞれの役割や習得すべきスキル・学習項目*が示されているため、DXを推進する際に、どのような人材が必要で、何を学ぶべきか把握できます。
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*各人材の役割や習得すべきスキル・学習項目はこちらをご参照ください。
デジタルスキル標準 ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)(PDF:2.7 MB) (参照:2023-10-23)

ビジネスアーキテクト | DXの取り組みでの目的を設定し、関係者の協力関係を構築、目的達成に向けてプロセスを進める人材 |
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デザイナー | ビジネスや顧客・ユーザーの視点から、製品・サービスの方針や開発プロセスを決め、製品・サービスをデザインする人材 |
データサイエンティスト | データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用をする人材 |
ソフトウェアエンジニア | デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用をする人材 |
サイバーセキュリティ | デジタル環境でのサイバーセキュリティリスクの影響を抑制するための対策をする人材 |
「デザイナー」とは
「デザイナー」の定義
「DX推進スキル標準」における「デザイナー」は、以下のように定義されています。
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材
- 出典: デジタルスキル標準 ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)(PDF:2.7 MB) (参照:2023-10-23)
近年の社会・技術・市場などの大きな変化により、デザインに求められる役割は、単に造形を美しくするだけではなく、人を起点とした価値創造・問題解決の手段へと変化しています。DX推進人材としての「デザイナー」は、データやデジタル技術の活用のその先にあるビジネスの変革を、顧客・ユーザーの視点を起点として実現する人材です。
DX推進における「デザイナー」の役割
DX推進における「デザイナー」の役割は、以下の3つです。
サービスデザイナー | 社会、顧客・ユーザー、製品・サービス提供における社内外関係者の課題や行動からバリュープロポジションを定義し製品・サービスの方針(コンセプト)を策定するとともに、それを継続的に実現するための仕組みのデザインを行う |
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UI/UXデザイナー | バリュープロポジションに基づき製品・サービスの顧客・ユーザー体験を設計し、製品・サービスの情報設計や、機能、情報の配置、外観、動的要素のデザインを行う |
グラフィックデザイナー | ブランドのイメージを具現化し、ブランドとして統一感のあるデジタルグラフィック、マーケティング媒体等のデザインを行う |
これらの役割から「デザイナー」に期待されるアクションは、以下2点です。
- 顧客・ユーザー視点でのアプローチを、一緒に取り組む関係者が常に意識できるように導く
- 倫理的観点を踏まえた顧客・ユーザーとの接点(製品・サービスと顧客・ユーザーとが関わるポイント)のデザインを行う
「デザイナー」に求められる知識・スキル
5つの人材類型に求められるスキルや学習項目*は、各人材類型のDX推進における役割ごとに明確に示されています。「デザイナー」においても、「サービスデザイナー」「UI/UXデザイナー」「グラフィックデザイナー」の3つの役割ごとに示されています。
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5つの人材類型に求められるスキルや学習項目はこちらをご参照ください。
デジタルスキル標準 ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)(PDF:2.7 MB) (参照:2023-10-23)
それぞれに求められる知識・スキルは、以下です。
①サービスデザイナー
求められる知識・スキル | 必要になる場面 |
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「顧客・ユーザー理解」や「価値発見・定義」のスキルの知識と高い実践力 | 顧客・ユーザーの課題特定や、バリュープロポジションの定義、製品・サービスの方針(コンセプト)を策定する場面 |
「戦略・マネジメント・システム」や「ビジネスモデル・プロセス」関連スキルで、ビジネスアーキテクトと協働しながら実践できる程度の知識と実践力 | 社会や社内外関係者(製品・サービス提供における関係者)の課題特定、製品・サービスの方針(コンセプト)を継続的に実現するための仕組みのデザイン、ビジネス視点からの実現可能性の検証をビジネスアーキテクトと協働する場面 |
②UI/UXデザイナー
求められる知識・スキル | 必要になる場面 |
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「顧客・ユーザー理解」や「価値発見・定義」「設計」のスキルの知識と高い実践力 | 顧客・ユーザー体験の検討や、情報設計、機能や情報の配置、外観、動的要素をデザインする場面 |
「テクノロジー」関連のスキルや、顧客・ユーザーとの接点をデザインする際に必要な「プライバシー保護」のスキルで、別類型(ソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティ等)と協働しながら実践できる程度の知識 | 製品・サービスのプロトタイプ作成を別類型(ソフトウェアエンジニアやサイバーセキュリティ等)と協働する場面 |
③グラフィックデザイナー
求められる知識・スキル | 必要になる場面 |
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「その他デザイン技術」のスキルの知識と高い実践力 | デジタルグラフィック、マーケティング媒体等のデジタル関連のデザインや、事業や製品・サービスを展開する際に必要な各種コンテンツのデザイン全般を行う場面 |
「マーケティング」や「ブランディング」のスキルで、マーケティングやブランディングの専門家と協働しながら実践できる程度の知識と実践力 | ブランドイメージの可視化、具現化をマーケティングやブランディングの専門家と協働する場面 |
「デザイナー」と他の人材類型の関わり
DX推進において5つの人材類型は、上下関係はなく、お互いに協働関係を構築することが重要です。以下は、「デザイナー」が他の人材類型と連携して進める業務の一例です。

「デザイナー」が連携して進める業務(一例)
ビジネスアーキテクト | 顧客・ユーザー調査の結果から導出されたインサイトを踏まえた製品・サービスのアイデアの検討 |
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データサイエンティスト | 顧客・ユーザー理解や製品・サービス検証のための調査、データ取得、分析、および分析結果の見せ方に関する検討 |
ソフトウェアエンジニア | デザインガイドライン、ユーザビリティ、倫理的妥当性を考慮した製品・サービスの開発、評価、検証 |
サイバーセキュリティ | セキュリティ強化によるユーザーの負担感を低減させるUIの検討 |
まとめ
今回は、DXを推進する中心的な人材の1つである「デザイナー」について、役割や必要なスキル、他の人材類型との関わりを解説しました。DX推進における「デザイナー」は、単に造形を美しくするだけでなく、製品・サービスのあり方を、ビジネス視点とユーザー視点の両側面で総合的にとらえて実現する重要な人材類型です。
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