
公開日:2023年09月26日
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更新日:2025年03月24日
企業のDX推進において、人材育成は必要不可欠です。しかし、「何を学ぶべきなのか」「どういった人材が必要なのか」お悩みの方も多いのではないでしょうか。そのような中、経済産業省は、DX時代においてビジネスパーソンが身に付けるべきDX人材のスキルを定義した「デジタルスキル標準」を発表しました。
こちらのコラムでは、「デジタルスキル標準」の内容や企業における活用方法について解説します。DX人材の育成・確保を検討している方は、ぜひご覧ください。
「デジタルスキル標準」とは
「デジタルスキル標準」は経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構が策定した、DX時代におけるデジタル人材の育成と確保・個人の学習に関する指針です。企業がDXを推進するために必要な人材が明確になるため、人材育成・確保の取り組みへの活用が期待できます。
「デジタルスキル標準」は、全てのビジネスパーソンを対象とした「DXリテラシー標準」と、DXを推進するコア人材を対象とした「DX推進スキル標準」の2種類で構成されています。
デジタルスキル標準
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育成対象
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内容
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DXリテラシー標準 | 全てのビジネスパーソン | DXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身に付けるための指針 |
DXスキル標準 | DXを推進するコア人材 | DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの指針 |

「DXリテラシー標準」とは
DXが進む社会やビジネス環境で、ビジネスパーソン一人ひとりが生き抜くためには、組織や年齢、職種に関係なく、各個人が自身の責任で学び続けることが重要です。「DXリテラシー標準」は、全てのビジネスパーソンが最低限必要となる心構え、知識、スキルが示されています。
「DXリテラシー標準」の全体像は、「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」の4つで構成されています。「マインド・スタンス」「Why」の部分で、変化する社会の中で価値を生み出すために必要な考え方や姿勢、今なぜDXが必要なのかという社会的背景を理解し、「What」「How」の部分で、具体的にどのような技術がどのように活用されているかを理解します。こうしてビジネスパーソン一人ひとりがDXに関するリテラシーを身に付けることでDXを自分事としてとらえ、変革に向けて行動できるようになることがねらいです。

「DX推進スキル標準」とは
企業がDX推進人材を育成・確保するためには、自社においてどのような人材が必要か把握することが重要です。「DXスキル標準」は、その参考となる指針で、DXを推進するコア人材を5つの分類(ビジネスアーキテクト/データサイエンティスト/サイバーセキュリティ/ソフトウェアエンジニア/デザイナー)に分け、その役割や習得すべきスキル*が示されています。
これらのスキルを身に付けるための学習項目も明確に示されているため、人材育成の施策に結び付けやすく、リスキリングの促進、実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化に役立てることができます。
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各人材の役割や習得スキル、学習項目の詳細は以下をご参照ください。
独立行政法人情報処理推進機構
DX推進スキル標準(DSS-P)概要
(参照:2023-9-21)

ビジネスアーキテクト | DXの取り組みでの目的を設定し、関係者の協力関係を構築、目的達成に向けてプロセスを進める人材 |
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デザイナー | ビジネスや顧客・ユーザーの視点から、製品・サービスの方針や開発プロセスを決め、製品・サービスをデザインする人材 |
データサイエンティスト | データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用をする人材 |
ソフトウェアエンジニア | デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用をする人材 |
サイバーセキュリティ | デジタル環境でのサイバーセキュリティリスクの影響を抑制するための対策をする人材 |
出典:経済産業省 デジタルスキル標準 「DX推進スキル標準」について をもとにSCSKサービスウェア株式会社作成(参照:2023-9-21)
企業における「デジタルスキル標準」の活用
「デジタルスキル標準」で扱われている知識やスキル、人材は汎用性が高く、業種や職種を問いません。また、全ての知識やスキル、人材が揃わなければDXが推進できないということもありません。それぞれの企業が「DXを通して何を実現したいか」という方向性を明確にし、業種や職種、企業規模などに合わせてカスタマイズして活用することで、自社のDX推進に役立てることができます。
企業における「デジタルスキル標準」の活用例
- 「デジタルリテラシー標準」や学習項目例*を参考に、全社員に向けた研修ラインナップを見直す
- 「DXスキル標準」を参考に、自社のDX推進に必要な人材のスキル・知識がどれくらい不足しているかを可視化する
- DX人材の役割や学習項目例を参考に、必要な人材を確保するための採用基準を見直す
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学習項目例はこちらをご参照ください。
独立行政法人情報処理推進機構
デジタルスキル標準
ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)
(PDF:2.7 MB)(参照:2023-10-23)
DX人材の育成・確保で最初に取り組むべきこと
DX人材の育成・確保において、最初に取り組むべきことは、デジタルリテラシー教育です。デジタルリテラシーが身に付く事で、自社のDXの方向性や人材確保・育成施策の検討をスムーズに進めることができます。
2021年4月、国内のデジタルリテラシーを底上げするために経済産業省オブザーブのもと設立されたデジタルリテラシー協議会は、全てのビジネスパーソンが共通して身に付けるべきデジタルリテラシーの範囲(Di-Lite)を「ITソフトウェア領域」「数理・データサイエンス領域」「AI・ディープラーニング領域」の3領域として定義し、それらを学習するために「ITパスポート試験」「G検定」「データサイエンティスト検定」の3試験を推奨しています。

その中でも、「ITパスポート試験」は全てのビジネスパーソンが知っておくべきIT領域の基礎的な知識を幅広く学習することができるため、デジタルリテラシー教育のファーストステップとして有効です。近年、業種や職種を問わず「ITパスポート試験」の応募者数が増加しており、特に非IT企業でのニーズが急増しています。

「デジタルリテラシーは全てのビジネスパーソンが身に付けるべき知識」という認識が急速に広がり、多くの方が学び始めていることが伺えます。全ビジネスパーソンに必要とされているデジタルリテラシーを学び、DXが進む社会やビジネス環境に適応しましょう。