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「ビジネスアーキテクト」とは?
DX推進における役割・必要スキルを解説

研修 / トレーニング

公開日アイコン 公開日:2023年11月06日
/ 更新日アイコン 更新日:2024年04月18日

デジタル技術が急速な進化を遂げている近年。多くの企業や組織はそれらを活用し、ビジネスモデルや経営戦略、業務プロセス、顧客体験などを変革し、新たな価値を創造する取り組み(DX)に力を注いでいます。そのような中、DXを推進する中心的な人材として「ビジネスアーキテクト」という言葉が聞かれるようになりました。

このコラムでは、経済産業省と独立情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準」において、「DX推進スキル標準」の人材類型の1つである「ビジネスアーキテクト」について、その役割や必要なスキル、他の人材類型との関わりを解説します。

「デジタルスキル標準」とは

「デジタルスキル標準」の概要

「デジタルスキル標準」は、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定した、DX時代におけるデジタル人材の育成と確保・個人の学習に関する指針です。デジタル化への受容を高め、DXを推進するために必要な人材像や知識・スキル・学習項目が明確化されています。

企業は、「デジタルスキル標準」を参照し、社内研修の設計や採用基準の見直しなど、人材育成・確保の取り組みに活用できます。個人としても、所属する組織の役割や自身のキャリアビジョンを踏まえ、必要な知識・スキルを認識するための指針として活用できます。

「デジタルスキル標準」は、全てのビジネスパーソンを対象とした「DXリテラシー標準」と、DXを推進する中心的な人材を対象とした「DX推進スキル標準」の2種類で構成されています。今回ご紹介する「ビジネスアーキテクト」は、後者に含まれており、DXを推進する中心的な人材類型の1つです。

デジタルスキル標準の構成
出典:経済産業省 デジタルスキル標準 概要 をもとにSCSKサービスウェア株式会社作成(参照:2023-10-23)

\「デジタルスキル標準」の詳細は以下をご覧ください/

「DX推進スキル標準」の概要

「DXスキル標準」は、DXを推進する中心的な人材を5つの類型(ビジネスアーキテクト/デザイナー/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ)に分けています。それぞれの役割や習得すべきスキル・学習項目*が示されているため、DXを推進する際に、どのような人材が必要で、何を学ぶべきか把握できます。

推進スキル標準の人材類型
出典:経済産業省 デジタルスキル標準 「DX推進スキル標準」について をもとにSCSKサービスウェア株式会社作成(参照:2023-10-23)
ビジネスアーキテクト DXの取り組みでの目的を設定し、関係者の協力関係を構築、目的達成に向けてプロセスを進める人材
デザイナー ビジネスや顧客・ユーザーの視点から、製品・サービスの方針や開発プロセスを決め、製品・サービスをデザインする人材
データサイエンティスト データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データ収集・解析する仕組みの設計・実装・運用をする人材
ソフトウェアエンジニア デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用をする人材
サイバーセキュリティ デジタル環境でのサイバーセキュリティリスクの影響を抑制するための対策をする人材

「ビジネスアーキテクト」とは

「ビジネスアーキテクト」の定義

「DX推進スキル標準」における「ビジネスアーキテクト」は、以下のように定義されています。

DXの取り組み(新規事業開発/既存事業の高度化/社内業務の高度化・効率化)において、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネート*し関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現にむけたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材

  • *必要なリソースの確保、チームの組成、適材適所を意識した偏りのないタスクの割り振り
出典:経済産業省 デジタルスキル標準 ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)(PDF:2.7 MB) (参照:2023-10-23)

つまり、ビジネスアーキテクトとは、「ビジネス/business(業務)」+「アーキテクト/architect(設計士)」を意味します。自社の事業内容や規模などから、「DXの取り組みで何を実現したいか」といった目的を設定したうえで、関係者を配置し、目的達成に向けて業務設計を行う人材です。

DX推進における「ビジネスアーキテクト」の役割

DX推進における「ビジネスアーキテクト」の役割は、以下の3つです。

新規事業開発 新しい事業、製品・サービスの目的を見出し、新しく定義した目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
既存事業の高度化 既存の事業、製品・サービスの目的を見直し、再定義した目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
社内業務の高度化・効率化 社内業務の課題解決の目的を定義し、その目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する

これらの役割から「ビジネスアーキテクト」に期待されるアクションは、以下2点です。

  • デジタルを活用したビジネスを設計し、一貫した取り組みの推進を通じて、設計したビジネスの実現に責任を持つこと
  • 関係者をコーディネートし、関係者間の協働関係の構築をリードすること

「ビジネスアーキテクト」に求められる知識・スキル

5つの人材類型に求められるスキルや学習項目*は、各人材類型がDX推進において取組むテーマごとに明確に示されています。「ビジネスアーキテクト」においても、「新規事業の開発」「既存事業の高度化」「社内業務の高度化・効率化」の3つのテーマごとに示されています。

それぞれのテーマごとに求められる知識・スキルは、以下です。

①新規事業開発

求められる知識・スキル 必要になる場面
「ビジネス変革」や「データ活用」関連スキルの知識と高い実践力 新製品・サービスの目的を定義し、それを実現するためのビジネスモデルやビジネスプロセスを設計する場面
「テクノロジー」や「セキュリティ」関連スキルにおいて、関係者をコーディネートするための一定の知識 ビジネスモデルやビジネスプロセス以外の幅広い技術面において、設計を行う場面

②既存事業の高度化

求められる知識・スキル 必要になる場面
「ビジネス変革」や「データ活用」関連スキルの知識と高い実践力 新製品・サービスの目的を定義し、それを実現するためのビジネスモデルや、ビジネスプロセスを設計する場面
「テクノロジー」や「セキュリティ」関連スキルにおいて、関係者をコーディネートするための一定の知識 ビジネスモデルやビジネスプロセス以外の幅広い技術面において、設計を行う場面

※①新規事業開発と②既存事業の高度化は、スキルを実践する場面・発揮する場面が異なり、それぞれに異なる難しさがあると考えられるが、必要なスキル自体に差はないと考えられるため、それぞれ同様のスキルが必要

③社内業務の高度化・効率化

求められる知識・スキル 必要になる場面
ステークホルダーが多い「変革マネジメント」における高い実践力 関係者のコーディネートを行う場面

「ビジネスアーキテクト」と他の人材類型の関わり

DX推進において5つの人材類型は、上下関係はなく、お互いに協働関係を構築することが重要です。以下は、「ビジネスアーキテクト」が他の人材類型と連携して進める業務の一例です。

「ビジネスアーキテクト」と他の人材類型の関わり
出典: デジタルスキル標準 ver1.1(分冊版:DX推進スキル標準)(PDF:2.7 MB) をもとにSCSKサービスウェア株式会社作成(参照:2023-10-23)

「ビジネスアーキテクト」が連携して進める業務(一例)

デザイナー 顧客・ユーザー調査の結果から導入されたインサイトを踏まえた製品・サービスアイデア検討
データサイエンティスト データ分析結果から得られるインサイトを踏まえた製品・サービスのアイデアを検討
ソフトウェアエンジニア
  • 新技術・ツールを起点とした製品・サービスのアイデア検討
  • 顧客ニーズに基づく開発要件の定義やソフトウェアアーキテクチャの設計
  • 開発優先順位の決定
サイバーセキュリティ
  • コストとリスクのバランスを考慮し、製品・サービスのリスクの最適な対応策の検討
  • リスクに応じた新たなルールの検討

まとめ

今回は、DXを推進する中心的な人材の1つである「ビジネスアーキテクト」について、役割や必要なスキル、他の人材類型との関わりを解説しました。DX推進における「ビジネスアーキテクト」は、「DXの取り組みで何を実現したいか」といった目的を設定したうえで、関係者を配置し、目的達成に向けて業務設計を行う重要な人材類型です。

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